2011年10月15日土曜日

映画で描かれる同性愛像に変化の兆し-1982年が分岐点? Changing Attitudes toward Homosexuality (1982)

アメリカの有名な映画評論家に、ロジャー・イーバートという人がいる。シカゴ・サンタイムズ紙で映画評論コラムを長年書き続けてる人で、テレビ番組も持ってる(た)。アメリカ版淀川さん?でもイーバートはゲイじゃないんだけど。(彼は2002年に甲状腺ガンと診断され、無事手術は終わったんだけど顔に人工皮膚(マスク?)をつけないといけなくなって、それ以来テレビへの登場はほとんどなくなってる。)

そのイーバートが、1982年に放送された番組で、「映画に描かれる同性愛に対し態度の変化あり」という特別番組を組んでたんだって。約26分の番組だけど見てみた。(この動画、観られるのはアメリカ国内だけからかも。もし興味ある人は、ここでこの番組のコメントを文字起ししてます。英語だけど。)


で、この番組で、こんな面白いコメントがある。

同性愛の扱いはひどいもんだ。ゲイの登場人物は、不幸な魂を抱えて自殺をするか、彼らの性的嗜好(コメント:当時まだ同性愛は生まれつきの「性的指向 (orientation)」じゃなくって、後天的に選ぶ「性的嗜好(preference)」と言われてた!)が理由で殺害されるかのどっちかだった。 (そうした映画での)メッセージは、ゲイは自殺するか殺されるかのどちらかだ、というもので、単なる映画のキャッチフレーズだけのことじゃなかった。THE TREATMENT OF HOMOSEXUALS IS PATHETIC. GAY CHARACTERS EITHER WOUND UP UNHAPPY SOULS WHO COMMITTED SUICIDE OR WERE MURDERED BECAUSE OF THEIR SEXUAL PREFERENCES. THE MESSAGE WAS GAY PEOPLE EITHER KILL THEMSELVES OR WILL BE KILLED AND THAT'S NOT JUST A CATCH PHRASE.

映画研究者のヴィット・ルッソが、彼の有名な本『The Celluloid Closet(セルロイド・クローゼット。1995年に同名のドキュメンタリー映画がつくられた)』 の中で、1962年~1978年、28本の映画がゲイをテーマに扱っていたが、これら28作品のうち22作品で、ゲイの登場人物は自殺または、毒殺、 溺死、絞殺、感電死していると書いている。これには、映画"Suddenly Last Summer"におけるカニバリズムは入っていない。こうした暴力的な死に加えて、ゲイの登場人物たちは、その(女性っぽい)しぐさなどのステレオ タイプとして描かれている。映画は、ゲイの登場人物を無視するか、殺害するか、ステレオタイプにはめ込んで描いている。BETWEEN 1962 AND 1978, ACCORDING TO RESEARCH BY FILM SCHOLAR VITO RUSSO IN HIS FAMOUS BOOK, "THE CELLULOID CLOSET," THERE WERE 28 FILMS THAT DEALT WITH GAY SUBJECTS AND OUT OF THOSE 28 FILMS, IN NO LESS THAN 22 OF THEM, THE GAY CHARACTERS EITHER KILL THEMSELVES OR WERE MURDERED BY POISON, DROWNING, HANGING OR ELECTROCUTION, THAT DOESN'T INCLUDE "SUDDENLY LAST SUMMER" WHERE IT WAS CANNIBALISM. IN ADDITION TO THE VIOLENT DEATH, THE GAY CHARACTERS IN MOVIES WERE TURNED INTO STEREOTYPES WITH EFFECTED MANNERISMS. THEY EITHER IGNORED THEM, KILLED THEM OFF OR TURNED THEM INTO PRANCING STEREOTYPES.
それが、1980年~1982年にかけて、こうした偏狭なイメージを覆す映画が続々と発表されている、というのがこの特別番組の趣旨。男っぽいゲイとか、屈折した不幸なゲイではなく人生を謳歌するゲイとか、これまでの狭いイメージから脱して多様なゲイが登場する映画が続々と作られた時期なんだと。

1982年当時、イーバートは、「これは一過性のトレンドなのか、それともこれから続くことになるのか、将来のみぞ知る」と言ってる。一応、2011年現在、これは一過性じゃなくって、その後も続々と色んなゲイをテーマにした映画が作られてるってことだよね。なんか、今ある地点から30年前にさかのぼると、こういう現代ゲイ映画の黎明期があったんだなぁってことがわかって感動。

この番組を見て、当時のゲイ映画、見てみたいなって思った。特に『バード・ケージ』の原作フランス版とか、ドイツ映画『TAXI ZUM KLO(タクシーでトイレへ)』とか。このドイツ映画は、男漁りに明け暮れる30歳の教師の話らしく、ハッテン場の個室トイレで次の男を待つ間、生徒のテストの添削をしてるシーンがあったりと、かなり笑えて過激な映画らしい・・・。


こういう映画のおかげか?アメリカでは徐々にゲイが社会に受け入れらているという調査結果も今週発表されてた。結果はこんなかんじ:

1973年、70%のアメリカ人が、同性愛は「どんな状況であれ間違っている」と回答
2010年、44%に減少

1988年、11%のアメリカ人が同性愛結婚を支援
2010年、46%に増加。40%は依然として反対

1972年、62%がゲイの人たちが公の場で発言する権利を支援
2010年、86%に増加

1973年、48%がゲイの人達が大学で教鞭をとることを支援
2010年、84%に増加

1973年、54%がゲイについて肯定的な本を図書館に置くことを承認
2010年、78%に増加

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