男運のない僕だけど、出会いが全くなかったわけじゃない。そんな一人が、Luke(ルーク)。オクラホマ州出身の25歳で、イタリア系。髪は黒く、目はブルー、身長は175センチくらい。僕と同じジムに通っていて、広い肩幅に、よく発達した胸板と、日本人にはありえない上向きの引き締まったヒップ。イタリア系の血筋なのか、肌は日焼けしていて、それが一層Lukeを精悍な顔つきにしていた。理想を絵に描いた、というよりも、現実が僕の理想になったと言ったほうが正しいかも。
Lukeと最初に出会ったのはバー。彼はバーテンダーとして働いていた。僕がこの地域に引っ越してきた2年前、初めてそのバーに行ったとき、最初のドリンクを注文したバーテンダーがLukeだった。アメリカのバーでドリンクを注文するときは、「Hi, how’re you doing tonight?」とか、「Hey, what’s up?」というような挨拶をするのが習慣。僕もそんな一通りの挨拶をLukeにしたところ、普通だと、即、「OK, so what do you wanna drink?(OK、注文は?)」って聞かれるのに、Lukeはバーカウンターから身を乗り出すようにして、「Are you having a good time?(楽しんでる?)」っていう返事。僕は「あれ?普通のやり取りと違うなぁ」ってちょっと違和感を感じた。
毎回、このバーに来ると、Lukeがいて他のバーテンダーとは明らかに違う優しい態度で僕に接してくれた。しばらくたって、Lukeからデートの誘いがあった。アメリカでは5月にメモリアルデーという休日がある。その日、Lukeの赤い車でドライブして、チャイナタウンでランチ。ランチを支払うとき、割り勘にしようって僕が言ったのに、Lukeが払うって言い張るもんだから、レジでちょっと押し問答に。そしたらレジにいたヒスパニック系のオバチャンが、「彼(Luke)が払うって言ってんだから、おごってもらいなさいよ」っていう突っ込みを入れてきた。その言い方があまりに大阪のオバチャン風で単刀直入なうえに、タイミングがよかったので、僕はもう笑いながら、Lukeにされるがままに自分の20ドル札をポケットにねじ込んだ。
そして自然がそのまま残されている森みたいな場所へ行って、二人っきりで小川沿いに散歩。バーテンダーっていう接客業が身に染み付いているのか、とにかくLukeは優しかった。小川を渡るときには、必ず自分が先に渡って、僕の手を取ってくれた。Luke自身、自分を頼りにしてくれるような人が好みなのだとか。僕はこれまでカレになった人に頼るってことはあったけど、相手に積極的に、「頼ってくれ」みたいなことは言われたことがなかったから、そんな男っぽい態度に照れくさいやら面映いやら。
デートが終わって別れ際に、「また今日みたいな時間が過ごせるといいね」ってLukeが言ってくれて、僕も心からそう思った。だけどLukeには4年間、一緒に住んでいるフィリピン人の彼がいることが、彼自身の口から発せられた。結局、それ以来、Lukeとのデートは繰り返されないまま1年以上が過ぎた。
そして翌年の7月4日、アメリカ独立記念日の休日に、またLukeからデートの誘いが。この1年間、たまにジムやバーでLukeとは出会っていて、挨拶はする仲だったけど、もうそれだけの関係。友達ですらなかった。だけど、誘われると断れないという、僕の性格が災いして、もう一度Lukeとデートすることに。再会して、いっそうかっこよくなったLukeを見て胸が締め付けられる息苦しさを覚えた。Lukeは、やっぱり前回と同じように、僕にとても優しかった。
Lukeに、「これまで2回デートしたけど、両方、ホリデーだって気づいてた?」って聞くと、Lukeはそれに気づいていなかったみたいで、「Oh, you’re my holiday girl!」って白い歯をのぞかせながら冗談っぽく笑って答えた。
Lukeの恋人はシステム・エンジニア。この職業は、普通の人が働かない日に、コンピュータをシャットダウンしてメンテナンスする仕事だから、休日出勤が多い。
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