今日9月11日は、アメリカのテレビは一日中9・11の追悼式とかドキュメンタリーの放送ばっかりだった。中にはニュースで、LA発、NY行きのフライトの機長が「不審な人物がいる」と通報して、軍機がフライト中の機体をエスコートするという事態が報道されてた。同じようにサンディエゴ行きのフライトでも不審者という疑いをかけられた人が逮捕されてた。だけど、ふたを開けてみると、彼らはいずれも単にトイレに行く回数が多かったというだけで機長が不審と思ったらしく、冤罪もいいとこ。アメリカ人の心に巣食った疑いの念はかくも醜い姿を現してる。
9・11の愛国心を煽るテレビ番組に辟易していた夜10時すぎ、チャンネルを変えたら『渡辺謙が見たアメリカ』(原題:Ken Watanabe's America: Japanese Americans and Post - 911 America)という番組をやってた。昨晩と今晩の2回に分けて放送されたドキュメンタリーだったみたい。昨晩のパート1を逃してしまったのが残念。
これはNHKが制作したドキュメンタリーで、9・11をきっかけにアラブ系アメリカ人やイスラム教のアメリカ人に対してアメリカ国内で差別や暴力がふるわれる状況が、第二次世界大戦中に日系アメリカ人に対して行われた差別の再来になっているという問題意識が出発点。歴史を繰り返してはいけない、そして繰り返さないためには歴史を学ばなければいけない、というので、第二次世界大戦中に強制収容所に送られた日系人たちへのインタビューを渡辺謙が自身で行っている。
特に見どころなのは、アメリカ本土出身の日系アメリカ人として初めてアメリカの国会議員になったノーマン・ミネタ氏へのインタビュー。ミネタさんが両親とともに強制収容されていたワイオミング州にあるハート・マウンテン強制収容所(The Heart Mountain War Relocation Center site)へも一緒に訪問したり、ワシントンDCにある日系人慰霊碑へも一緒に同行したりしている。
ミネタさんは、アメリカ政府が日系人を強制収容所へ送ったことは間違いだったということを政府に認めさせた人。1988年、レーガン大統領のとき、ミネタさんが中心になった議員たちの努力で、強制収容所へ送られた日系人たちへの正式な謝罪と、関連法案を通過させた。そして10年前の9・11当時、ミネタさんは運輸省長官という地位にあって、すぐさま「アラブ人、イスラム教徒への差別は行わない」と公式発表した人でもある。こんな立派な人だったんだね。
でも、ミネタさんみたいな人ですら、「いまだに私は(アメリカで)外国人だと思われる。まだ平等には扱ってくれない」と言っている。やっぱりアジア人顔というだけで、アメリカ人ではない、と思われる社会なんだよね、アメリカは。きっとアラブ系アメリカ人も同じような苦しみのはず。
ちょうど今年8月、ミネタさんも収容されたハート・マウンテン強制収容所跡地にミュージアムが開設されて、当時収容されていた日系人たちが集まったのだそう。
HEART MOUNTAIN WYOMING FOUNDATION
http://www.heartmountain.org/
これからアメリカという国が存在しうる限り、未来永劫9月11日はメモリアル一色の日になる。アメリカは当事者(被害者)だから冷静に事態を見つめることはとっても難しいことだろうけど、昨日のブログで書いたように9・11と聞いてパールハーバーを連想するんだったら、9・11以来差別されるアラブ系アメリカ人やイスラム教のアメリカ人を見て、1988年にアメリカ政府が正式に謝罪した日系アメリカ人のことを思い出すべき。だけど、そこまでこの国の国民性が成長・成熟するにはまだまだ道のりは長そうだね・・・。
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