先週末のアカデミー賞を楽しむために、この冬はノミネートされた作品や気になる作品をしらみつぶしに観てきたのね。こんな感じで⬇
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その数15本以上。これだけ観たのに、主演女優賞でジュディ・デンチがノミネートされてた『『あなたを抱きしめる日まで』(原題:"Philomena")』を見逃してた!
アカデミー賞を見ながら、「フィロミーナ」っていう映画もノミネートされてたことに気がついて、遅ればせながら(あんまり期待せずに)観てみた。
そしたら、かーなーりー良かったー。
3Dや特殊効果なんかのおかげで、色んな部門でアカデミー賞を受賞した「ゼロ・グラビティ」よりもずっと良い!
僕にとっては、この冬に観た映画の中でトップ3本に入るよ。なんでもっと早く観なかったのかと思うと悔しいっ!
あまりに評判になる作品が多すぎて、低予算のイギリス映画(外国映画)で、実話に基づくヒューマン・ストーリーだったから、アメリカ国内のメディアであんまり取り上げられなかったんだろうねー。こんなに良い映画なのに。
やっぱ、お金で露出が左右されるマスメディアだけを信じてちゃダメってことだね。こんなに良い映画が埋もれてしまうとは。
日本語字幕付きの予告編はこちら。
以下、ネタバレ注意!この映画を心から堪能したい人は、これ以上読むと危険!
僕も、まったく事前情報なしで観たから感動と驚きが大きくなったと思う。
もちろんアクションものではないし、SFものでも3Dでもないから、そういう派手なハリウッド映画が好きな人には物足りないと思う。だけど、僕が以前に感想を書いた『プレイヤーズ・フォー・ボビー(Prayers for Bobby)』とか、『マッジ・ボーイ(The Mudge Boy)』とかを観て感動した人にはお勧め。
Prayers for Bobbyを観た感想
The Mudge Boyを観た感想
* * *
この映画監督は、アカデミー賞を受賞した映画『クィーン』を監督したのでも有名なイギリス人のスティーブン・フリアーズ(Stephen Frears)。
彼はストレート(ヘテロ)なのに、ゲイをテーマにした映画を作るので有名なんですねー。インタビューで、彼はこういう風に答えてる:
ゲイのストーリーに常に興味を抱いてきた理由は、あらゆる種類のアウトサイダー(よそ者)の物語が彼の芸術的興味を刺激するからだ。(中略)「女性、ゲイ、そして移民は、抑圧されているとうことの比喩に見えるんだ」
[g]ay storylines have interested him because outsider stories of all kinds spark his artistic curiosity. . . [I see] women and gays and immigrants as a metaphor for being oppressed.”
彼のこれまでの作品で、僕がゲイ映画の傑作だと思うのは、『マイ・ビューティフル・ランドレット My Beautiful Laundrette (1985)』 。
ストーリーはこんなかんじ。
アル中の父親と共にロンドンに住むパキスタン系のオマルは、イングランドも政治も好きではなかった。一方、ロンドンで成功する実業家の叔父ナーセルは、オマルの父親に頼まれ、コインランドリーの経営をオマルに任せるようになる。 ある日、右翼の人種差別者たちから車を壊されそうになったオマルは、その中に旧友のジョニーを見つける。ジョニーによって難を逃れたオマルは、赤字経営のコイン・ランドリーをジョニーと共に経営するようになる。(ウィキペディアから抜粋)で、パキスタン移民のオマールと、白人イギリス人のジョニーは恋人関係になるんですねー。
80年代のイギリスの社会情勢とか、ゲイや移民への差別が凝縮された作品で、ゲイ映画としても傑作だと思う。
そんな監督が、 なんで『あなたを抱きしめる日まで』の原作本の映画化を手がけることにしたのか——
映画を観ればわかるよー。あー、言っちゃったー。この時点でもうネタバレね。
そうなんです。『あなたを抱きしめる日まで』って、ある意味ゲイ映画なんだよー。
ジュディー・デンチが主人公のヒューマンドラマっていうフレコミで宣伝してるから、全然、ゲイの消費者に訴求できてない!これって問題じゃない?でも、そこを予告編とかでバラしちゃうと、ストーリーの感動が薄れてしまうから、映画のPR担当もここは悩んだと思うんだよねー。映画を見た人たちの口コミに任せるつもりなのかね?
そういう意味では、同じようにゲイの登場人物を伏せてPRしたことで、観客を劇場であっと言わせた映画『クライング・ゲーム』(The Crying Game:1992年)が有名。これまた傑作。
ちなみに、これが『あなたを抱きしめる日まで』の原作本の表紙。
そしてこれが出演者と本人の比較写真。 似てるね。
やっぱり、僕がこの映画に感動した理由は、僕自身がゲイの息子で、しかもアメリカに住んで母親からは遠い異国の地にいるということとこの映画が重なって見えたから。
アイルランドとイギリスで50年間、(アメリカに)養子に出された息子を想ってきた母親フィロミーナの姿と、そんなことは知らされていない息子の気持ちがようやく巡り会えたとき、熱いものが胸に込み上げてきます。
最後に、ジャーナリストのマーティンが、フィロミーナと共にした旅を振り返って、詩人T.S. エリオットの一節を引用してる。 僕なりに訳してみました。日本を飛び出して海外で暮らす人にはどこか響くものがあるはず。
人は未知なるものを探ることを止めるべきではない
そしてあらゆる探索の終わりには
出発した元の場所にたどり着く
そしてその場所の意味を初めて知ることになる
We shall not cease from exploration
And the end of all our exploring
Will be to arrive where we started
And know the place for the first time.
T.S. Eliot, Little Gidding, Four Quartets
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