ちょっと長く東海岸に滞在しすぎてるかも・・・。ついにこっちも蒸し暑くなってきて、外を歩くとすぐに汗がじっとり。。。南カリフォルニアの乾燥した気候が恋しくなってきた。
旧知の知人たちとも何度か食事を繰り返したのだけど、やっぱり僕の滞在期間が残り少なくなってくると、またお別れムードに(昨年、引越し前に何度もお別れ会してもらったのに・・・)。普通に会って食事するつもりなのに、向こうはまたもやお別れムード。。。
昨晩の土曜日は、ボブの自宅でワイン・ディナー会だった。ボブとは結構古い付き合いなんだけど、関係が複雑。。。ボブは、大昔にジェームスの妹と結婚してたけど離婚。再婚して二人の娘がいる。僕がこの街に引っ越してきた直後くらいに2番目の奥様とも離婚。その理由が、「俺、実はゲイなんだ」というもの。
僕もそれを初めて聞いたときは信じられなかった。元妻であるジェームスの妹も、「信じられない。彼のPC履歴から、彼が見てるポOノサイトを覗いたことがあったけれど、ノンケ/ストレートものだったし」なんていう証言まで。「離婚したいがためにウソをついてるのかも」、なんていうのが周囲のうわさだった。
だけど、たまにジェームスとボブと3人で食事したりゲイバーにいく仲になって(ジミーも含めて4人で食事もしたことあり!)、彼も普通のゲイ並みに男性に興味がある風な言動を取ってたし、デートしてる男性のことが話題に出てきたりして、僕も彼の「遅咲きの目覚め」を信じるようになってきてた。
そして今回、久々に「故郷」を訪問して、ジェームスから聞かされたのが、「今、ボブって女性と付き合ってるんだって」というニュース。
ボブって知的なんだけど、その分、複雑な人みたい・・・。某有名私立大学でエンジニアリングを専攻後、これまた某有名私立大学のロースクールを出て、今じゃバリバリの弁護士。多才で理路整然。休日には自転車で何マイルも走ったり、日曜大工をしたり、はたまた油彩で絵を描いたりして過ごす人で、マルチタレントを絵に描いたような人。家系も古くはイギリスの裕福なご家庭が出身らしく、お父様もちょっとした有名人。僕も一昨年の大学院受験の時にはエッセーを添削してもらったし・・・。ま、ジェームスつながりで仲良くさせてもらってるって感じの人。
昨晩は、ボブの一人暮らしの邸宅にジェームスと二人でお邪魔して、3人だけのお別れ会/ワインパーティーになった。
最近ワインにはまってる僕が企画したパーティーだったので、僕がセレクトした特別ワインを3本持参。一番グレードが高いアルゼンチン産のマルベックから始まり、オーストラリア産シラズ、そしてイタリア産カベルネ・ソービニオンで締め――と思ったら、その時点でかなり全員酔っ払ってるのにおいしいワインだから「まだ飲める!」ムード。しかも話題も弾んでホンネトークが5時間くらい続いた。例えば、僕がボブに、
「今、女性と付き合ってるんだって?」
と聞くと、
「つきあってた、だね。もう別れた」とのこと。
バイの人は、ゲイの知人にも理解されにくく肩身が狭いというのを聞くから、僕はボブを否定するようなことは言うまいと気をつけて、
「ふぅ~ん。そうなんだぁ」と返事。ジェームスも、
「ボブは複雑な人なんだよねぇ」という同情コメント。
あと、僕の恋の相談も、無理やりのってもらって、ジェイのことについて聞いてみた。理路整然としたエリート弁護士の意見は、
「見た目がプリティーな人はやめとけ。絶対いいことない。そういうやつは周囲の人間をクソみたいに扱ってもなんとも思わない。使われて終わるだけ」
僕のワインに浸った心にグサリ、グサリの連発。。。
この時点ですでに3本のボトルを空けてたけど、3人とも「まだいける?」という雰囲気。なのでボブがストックのワインを1本寄付。その4本目を空けた頃には、全員がグデングデン。特にジェームスは3本目あたりからすでに呂律がまわらなくなってきてた。
僕もかなり酔ってしまってたけど、「注ぎ訳」に徹してた僕は、実はジェームスとボブのグラスにばかり注いで、自分のには2回に1回の頻度くらいでしか注いでなかった。ボブもかなり酔っ払ってたけど、自分の限度を知ってる風で、最後のグラスは残してた。
午前2時近くになり、そろそろお開きにしようかということで、テーブルの片付けを開始。ボブがタクシー会社に電話してタクシーを呼んでる間、ジェームスは酔いのあまりリビングのソファーかどこかで休んでる模様。僕は足が千鳥足になりながらも、食器をキッチンへ運ぶ。
こんな作業の合間、ボブが僕にお別れのハグをしてきた。
ハグ好きなボブは、いつも会うと僕にハグをしてチークにキスをしてくれる。
だけど、この晩のお別れのハグは、いつもより強いハグで、チークへのキスも長め。。。いつもはお返しのキスをしない僕も、この時ばかりは酔いが手伝ってキス、、、と思ったらボブの唇がランディング――――
これまでボブにはそういう興味を抱いたことがなかったので、完全に酔いのせい。だけど、ボブのそういう視線をこれまで感じてなかったかと言われると、そこは薄々気がついてたわけで・・・。ま、ブライアンみたいなもんかもしれないけど、ボブはちと違うかな。
ボブが持つある種のセクシーなオーラは認めます。それがどこから来るのか、、、やっぱ男っぽいところなのか、知的なところなのか。だけど、ジェームスの妹と結婚してたり、娘が二人いたり、女性と付き合ってたり、今はジェームスの親友だったり、、、もろもろの要因から避けてた人。
数秒、キスしてたかも。その辺の時間感覚はあやふい――――
僕は我に返ってボブから離れ、食器の後片付けを再開。ずっと静かなジェームスが気になって、リビングに行ってみると、彼は階段に腰掛けてうずくまってる。かなり酔ってる模様。話しかけると、ジェームスは、
「う、、、かなり酔ってる」と、声も頼りなさげ。
「大丈夫?タクシーがもう少しでくるから」と言って、僕はキッチンへ戻る。
キッチンではボブがディッシュウォッシャーを操作していた。なぜかボブとまたキス
ふと気がつくと、玄関のドアが開いてる。ジェームスの姿が見えない。あれだけ酔ってて、一人で深夜2時過ぎに外を歩くのは危険。もしや、、、
僕はボブに、
「ジェームス、僕らのこと見ちゃったのかな?」と聞くと、
「さあ、わからない・・・」と頼りない返事。
全く予想してなかった展開に僕は動転。ジェームスを傷つけてしまったかもという罪悪感が僕の酔いを一気に醒ます。
僕も外に出て左右を見渡すけどジェームスの姿は見当たらない。今、僕はジェームスのアパートに泊まっているので、一緒に帰るはずだったのに。
一旦、家の中に戻ると僕の携帯にジェームスから電話が。
「一人でバスに乗っちゃった」
徘徊老人みたいな言動に出てるジェームス。
「なんで一人で帰っちゃったの?」と僕。
「だってボブとキスしてるの見ちゃったんだもの・・・」
やっぱり見られてたか。
ジェームスの返事はボブには聞こえてない。僕は、ボブに、ジェームスが一人でバスに乗ったことを告げる。気が抜けてリビングのソファーに座り込む僕。
タクシーを電話で呼んでから既に20分が経とうかというのにまだ来ない。いつのまにかまたボブとキスしちゃってるし―――――
そしてボブが僕の耳にささやいてきた
「君のことをずっとこんな風に考えてた」
返す言葉が見つからない
後半に飲んだワインが、時間差で脳に襲ってきた。酔いのせいで天井が回る。。。
タクシーはまだ来ない
ボブは、僕に
「今晩はもう遅いから泊まっていけ」
ボブに連れられ、彼の寝室に寝かされる僕。仰向けになっても天井が回る―――
どれくらいそうしてたのか。ボブが僕のために歯ブラシをもって寝室にやってきた。幼い子供を持つ父親だけあり、人の面倒を見るのは慣れてる。僕を抱えながら洗面所に、、、。
だけどやっぱ、ジェームスにあんな思いをさせたうえに朝帰りでもしたら、僕の罪悪感は消えないどころか増すばかり。それに、僕はもうLAの住人なわけで、ボブとは何も起こりようがないわけで。
「外にでたら流しのタクシーがつかまるよね」と僕はボブに言って、やっぱり今晩はジェームスの家に帰ることを告げた。
ボブも僕の決意を汲み取って、
「そうかい。じゃ、家を出て左折して、OXストリートをまた左折したら大通りに出るから、そこだとタクシーつかまると思う。8分くらい歩かないといけないけど」
はっぷん?この深夜3時ちかくになろうとする時間に、、、しかも僕、かなり泥酔してるし、、、。てっきり一緒にタクシーを拾いに来てくれるのかと期待してたのに、手のひらを返したように冷たい態度。
「もしタクシーが見つからなかったら、ここに戻っておいで。鍵は開けとくから」とボブ。
この晩、嵐が急接近して雨も降り出し、雷がゴロゴロ。タクシーがなかなか見つからず、真夜中のアメリカの街を酔った足と頭で彷徨うという災厄。。。なんでこんな結末になってしまったんだろう。。。
結局、タクシーを4人の他人と!相乗りして、ようやくジェームス邸に到着。
部屋に入ると誰もいない。キッチンとバスルームの電気がついてる。そしてバスルームのフロアーに倒れこんで泥酔してるジェームスを発見。抱えてベッドへ。途中、自分で歩くそぶりを見せたジェームスが、ベッドに到着する手前のところで頭から落下・・・。一応、大事には至らない程度に。。。
酔い覚ましのためにシャワーを浴びてジェームスのベッドにもぐりこむと、ジェームスが話しかけてきた。
「何がおきた?」
暗闇の中、たまに雷で青光りの閃光が白い壁を照らす中、これまでの状況をジェームスに説明。今晩の出来事をようやく思い出し始めたジェームス、僕に
「ボブとエッチした?」と質問。
どこまでがエッチに入るのか、、、、でも最後まではしなかったのでNoの返事。
「だけど、ボブってグレート・キサーだね」と僕。ちょっとほくそ笑むジェームス。そして、ボブが流しのタクシーを一緒に探してくれなかったことをジェームスに漏らしたところ、
「あー、それはボブが君に泊まっていって欲しかったから、最後の抵抗を態度で示してたんだね」と、まだ泥酔してるはずなのにかなり的を射た分析。そして、続けて、
「僕はボブも君も大好きだから」
* * *
翌朝、まだアルコールが残る頭で布団の中でまどろんでると、ジェームスがボブに電話をしてる声が聞こえてきた。
「ハイ、ボブ。昨晩はありがとう。何があったのか、全く覚えてないんだけどさ。今朝目が覚めたら、Tyが隣で寝てるからさ、ああ、僕ら二人とも無事戻って来れたんだなって」とジェームス。
ジェームス、あえてキスを目撃したということは言わないことにした模様。後からジェームスから聞いたところ、ボブはジェームスに、昨晩僕に泊まっていくように言ったと話したらしい。ジェームスのかまととぶりを、ボブがどこまで見抜いてたかは不明だけど、ジェームスの、「今朝目が覚めたら、Tyが隣で寝てるからさ」の部分に力が入ってたのを、ボブは気付いたかも。
それにしても、せっかくの「お別れ会」が台無し・・・。だけど、酔いと雰囲気に流されず、最後の一線は越えずに帰宅した自分をほめたい。
* * *
今にして考えると、タクシー会社に電話する振りだけして、実はボブ、タクシーを呼んでなかったかも・・・・